プロの投手の発言とジャイロボールを考えてみる

色んなピッチング系の Webサイトやブログを観察していると、技術指導やチームで行っている練習、投球理論などをまとめてあるものが多いですよね。その中でも根強い人気なのがジャイロボール。「現代の魔球」と表現されたりもしますが、実際に回転をみてると通常の回転よりも新鮮でとても美しいですね!今回は私の体験やプロの発言を検証してみました。

とは言っても難しい投球理論を提唱するわけではなくて、実際に有効なのか?や実在するのか?といった一般論です。ネットで得られる情報は、かなり混乱していた印象を受けましたので、何が正しいの!?って人の疑問を少しでも解消できればと、まとめてみました。

ジャイロボールって実際に存在するの?投げられるの?使えるの?という疑問を持っている人向けの記事です。

※私は批判や否定するためにこの記事を書いているわけではありませんので、あらかじめご了承ください。

ジャイロボールを考えてみる

ジャイロボールって一体なに!?

今さら感が否めませんが、知らない方へ簡単に解説します。上達屋の手塚氏が提唱したボールで、回転軸がボールの進行方向に一致する…まぁアメフトのスパイラルするような、弾丸と同じ回転のボールですね。

それまでの野球界では、バックスピンやトップスピンのボール、そこから微妙に回転軸が傾くといった派生系の変化球しか概念がありませんでしたが、氏の発見によって大流行した人気の魔球です。最近の小学生はアニメ「メジャー」の吾郎君といった方がわかりやすいかもしれませんね。

私も中学生の頃必死になってこの回転のボールを練習した思い出があります…w

一流の投手はどう考えているのか?

ダルビッシュ投手は変化球に対する探究心がすごいのは皆さんもご存じだと思うのですが、一般ユーザーとのツイッターのやり取りで、非常に興味深い発言をしています。

一般ユーザーの『ダルさんのストレートってドリル回転気味に見えるんですが違ってますか?』という問いかけに、『全くの真っ直ぐです。ジャイロを目指しても得るものはゼロ、です。』とハッキリ答えています。

続けて『皆が見た事あるジャイロ回転はスライダーやカット系の抜けただけの球。大体、全力で投げた場合ジャイロ回転は出ないよ。 もし世間で知られてる様なジャイロボールが存在したならとっくに投げてるから!』とも発言しています。

これは非常に興味深いですよね。

理論上は存在するはずだが…

ジャイロボールは理化学研究所の姫野龍太郎氏が長年研究しているようで、理論上は確かに存在するようですね。発見者の手塚氏もジャイロボールの投げ方というように独自の投球理論を発表し続けています。

で、先ほどのツイッターでの続きがあるんですが、別のユーザーの方(たぶん上記の“理論上は存在するし投げ方もある”ってことを知っている方だと思われます)が、『理論が理解でき、かつ、練習すれば誰にでも投げられるってことですか?』と質問したんです。

この問いに対してダルビッシュ投手は『だから無理ですって^^;投げられたとしても全くスピードが出ないし、無理なフォームになるため打たれるし、ケガします。』と発言しています。

むむむ!?これはちょっと手塚派とダルビッシュ派に分かれそうですねw

何でも記号化するから食い違いが起こる

では石川は、どう考えているのか?ズバリ、ダルビッシュ派です。ジャイロボールは無いですね … と当時に手塚派でもあります。おいw

というのもですね、理論というのは運動を記号化しカテゴライズすることで成り立ちます。ですから、たった1球の失投を打たれただけでクビになるという状況で投げ続けているピッチャーとではあまりにも置かれている状況が異なるんですよ。

刀の軌道がジャイロ回転していたんだ!!…だから??

記号と言われてもわかりにくいでしょうから、もっとわかりやすくしましょう。

時代は戦国時代へタイムスリップ。あなたは鉄の持つズシッという質の、バットとは明らかに異なる重さ約1キロの真剣を手に持って、敵とみられる“いかつい侍”に、いまにも斬られそうな状況です。

さて、あなたはこの人生でもっともヤバい瞬間に“刀の軌道がどうこう”考えますか?進行方向へ回転するような軌道が見えたとか、そういう風に切っ先に回転を加えて突きをしたとか…。

ここが一流の投手は違うんです。真剣に戦っているのなら、相手を倒すまでの過程を考えてはいけない。たとえ、どんなに空気抵抗の少ないジャイロ回転で扱えても首筋にスッと敵の刀が触れたら即アウト。こっちの刃が敵の動脈に触れたら生き残れる。

研究者というのはその戦いを分析してなんで勝てたのか?なぜ負けたのかというのを科学的にあらゆる面から考えるわけです。

あなたの野球は趣味なのか?本気なのか?

ですから、現役で投手を行っているプレーヤーは果たしてこういう情報は必要か?ダルビッシュ投手はそこを言いたいんでしょうね。じゃなきゃ、あんなに変化球にこだわらないでしょう。「打者を抑えること」興味があるのはそこだけです。


手塚氏がジャイロボールの投げ方関連の書籍内で“リ・プリンティング”という言葉を使っていたのもそれが理由でしょう。(いまは使っていないのかな?)無意識にそれらができなければ意味がないということを何度も指摘してありましたからね。

一度知ったら抜け出せない!記号という甘い誘惑

じゃユーザー側が勝手に手塚理論を誤解しているだけなのか?残念がらそうでしょうね。冒頭でも言いましたが、私も当時ジャイロボールを投げることに必死になっていたのですが、無意識に投げる事はできませんでした。

結果的に「相手をただただ抑えること」からとんでもなく逸れてしまいました。試合じゃとてもじゃないが使えないレベルにまで、ですw これは無意識にジャイロボールというボールをカテゴライズしてしまった結果だと私は思っています。

たとえば、手塚理論でジャイロボールを投げようとしたら「シュート回転はダメ」という関係が成り立つんです。でも、実際はシュート回転がどうこうというのは、相手を抑えることの過程であり、そこへ興味をもってしまうと…。

ダルビッシュ投手はそこに気づいているのかもしれませんね。調子が悪けりゃシュート回転は当然するし、そういう状況でも、上手く相手を抑えながらゲームを作るのが仕事だろ、という意味で。

マーケティングには使えるんですがね…

草野球ならジャイロもあり?

これは余談ですが、一般のプレーヤー、平たくいえば「1球の失投でクビになるような環境で試合をしていないプレーヤー」の場合、私はジャイロボールを意識的に投げる練習をしても良いかと思ってたりもしますw

これだけこのボールが流行したのも、やはり氏が理論やデータをわかりやすくカテゴライズしてくれたおかげであり、そういう意味ではジャイロボールは成功したなと思います。

運動と記号の関係はそれくらい難しいんですよ。ましてやビジネスとしてこのジャンルを扱うとなればなおさら…。

ただ、競技生活がかかっているような試合で投げる投手は「知る必要のない情報」でしょう。目的を「ジャイロボールを投げること」にできるような環境でプレーしているのであれば存分に行うべきです。

ジャイロボールについて考えるのまとめ

まとめると、選手と研究者とでは埋められない溝があるということw 存在する・しないの論争は好きなだけ行って構わないでしょうが、試合で投げられる・投げられないは別。

たとえ、無意識に投げられるようになっても“そこ”へ執着する事は、真剣勝負の世界では生き残れないというのが現実です。「相手をただただ抑えること」にすべてをかけること。現役で真剣勝負をしている学生投手は気を付けてくださいね。相手を抑える過程に興味を持つと、簡単に記号の闇へ引きずりこまれますからw 引きずり込まれた石川先輩からのアドバイスですw

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