苦手とするアウトコースを上手く対処する方法とは?
誰にでも苦手なコースが少なからずあると思いますが、いったん苦手意識を持ってしまうとなかなか改善する手立てがないという選手も少なくないはず。昔から『困ったときはアウトコース低めを投げなさい』と言われるように、多くのバッテリーは外角を中心に配球を組み立ててきます。もちろんどんなコースでも対応できるバッティングが理想的ですが、今回はアウトコースの攻略法に絞って解説していきます。
一般的な外角球への対策としては、ホームベース寄りに立つ、インステップ気味に踏み込んで打つ、予め配球を読んで流し打ちに徹する…などが考えられます。普段の練習でもアウトコースのボールを何度も繰り返し打つこともしているでしょう。しかし、実際にはインコースのボールも投げてきますから、試合で打てるようにするには根本的に苦手意識を無くす必要があります。
外のボールに手こずってしまう理由は大きく分けて2つあると私は考えています。
ストライクゾーンとは別に『外角は届く』という意識が必要
まず1つめは意識の問題。バッティングをしているときは自分の中でストライクゾーンというのを作ると思います。この枠がハッキリしていると選球眼にも直結するのですが、アウトコースのボールに対しての苦手意識を無くすにはこれだけでは不十分なんです。
枠の外、つまりストライクゾーンのエリア外にガイドラインとなる軸を意識できるかどうかで決まります。
たとえば、いま立っている位置から数メートル先の台へ飛び移ろうとしたとき皆さんはどのような心理や意識が働きますか?まず、パッと見て『結構遠いな、これはジャンプして届くのか?』という距離だったら、間違いなく着地地点を予測するはずです。
このときに無意識にイメージするのは着地が完了している自分の身体です。これが上手くできないと目測を誤ってしまう危険性が高まるというわけです。野球で『動きの中心となるのは体の軸』とよく言われますが、こういう意識のガイドラインとしても軸は役に立っているんです。
いま立っている位置の軸と、着地が完了している軸をイメージすると『届くか届かないか』というのがわかってくるんですよ。
外角に軸を意識すれば振るべくボールなのかがすぐにわかる
これをバッティングで置き換えると右図のような感じです。
ストライクゾーンは普段から練習していればある程度は正確に作れてくると思います。それとは別に、枠の外へ体の軸と同じような軸を意識すると打席での景色がガラリと変わってきます。
台から台へと飛び移る例でも説明しましたが、イメージができていればそのコースは振るべきボールなのかどうかがわかるということです。
外のボールに対しての苦手意識というのは、届くかどうかのガイドラインがあやふやな状態で打席に立っているからでしょう。
イチロー選手がメジャーで初めて退場をしたときに、ボールの軌道を正確にバットで指し示したことはご存知の方も多いかと思います。このようにストライクゾーンとは別にガイドラインとなる軸を意識するだけで苦手意識というのは今よりも格段に無くなるでしょう。
手を出そうとするから逆に打てないという事実
次に2つめの理由です。アウトコースのボールに対して、どうしても腕やバットのリーチを使いたくなるということ。これを普段から行ってしまうバッターは外のボールにかなり手こずっていると思われます。
バットのリーチを利用するスイングをしてしまうと、どうしてもインコースのボールが打てなくなってしまいますので余計に外のボールが対処できなくなるという悪循環に陥るんです。
そうならないためにも、インコースを苦にしない事がアウトコースの攻略へと繋がってきます。
そこで私が選手にお勧めしているのが、
- 肩甲骨からバットのヘッドまでのリーチを確認する。
- 普段からインコースの厳しいボールを想定してスイングしておく。
- アウトコースのボールに軸で反応できるようにさせる。
という感じで、普段からバットと腕を合わせたリーチの長さを確認して意識しておくことです。
イメージとしては、打者が手を先に出すのではなく、あくまでもギリギリまで手の内を見せずに打ちに行くという感じです。普段からリーチを利用しするバッティングをしていると、タイミングを崩された時の対応が難しくなり、結局はアウトコースのボールも打てないという結果になってしまいます。
体の軸をボールに寄せるということ
リーチを利用せずにコンパクトなスイングを求め続けていれば自然と出来るようになりますが、ボールに対してのアプローチも一応解説しておきます。
1つめのストライクゾーンの外に軸を意識する事と、シャープにスイングしていく事を同時に行えば、自ずとバットが届く範囲が限られてきます。そこで、バッターはどうすればベストかというとアウトコースに対して運動の中心となる体の軸を寄せていくという方法が最も最適でしょう。
これは大きく分けて2タイプあります。
体重移動をほとんどせずにその場で軸の回転で打つバッティングスタイルの選手に多く、パワーヒッター系の外国人選手によく見かける動作ですね。このタイプは一般的に少年野球ではお勧めされないと思いますが、体軸が綺麗に前傾していればスイング自体には悪影響は無いので、打撃フォームに対しての固定観念が無いバッターなら積極的に取り入れるべきかと。
体重移動をしっかり行ってボールに向かっていくバッティングスタイルの選手に多く、アベレージヒッター系の選手によく見かける動作です。こちらのタイプの方が“ボールに身を寄せる”というイメージが湧きやすく、私が実際に選手達に指導していても理解が早かったと感じました。
問題はどれくらい動いたかではなくボールに身を寄せること
どちらのタイプが良いかは各々の理想とする打撃スタイルや思考によって変わってきますので一概にはいえません。どちらのタイプにもメリットがありますし、こればかりは練習で感じを掴むしかないでしょう。
とはいえ、体軸をボールの軌道に寄せることはどちらも変わらないわけですから、大切なのはそれらの形を覚えるのではなく、必死になってボールに食らいついていたら自然とそういう動きになっていたというのが正しい流れです。
よく『どれくらいのステップ幅で、軸を移動すればいいのか?』『軸を倒したら高低への対応が出来ないのではないか?』などの質問を受けますが、それこそナンセンスです。形を決めつけているからこその質問であり、ボールに身を寄せることが目的となっていない証拠です。
従って、私は小学生に指導するとき、あえてこのようなカテゴライズをせずにボールにベターッとくっついていく、食らいついていくことを教えます。ちなみに、もうワンランク上の話をすると、両者のタイプは同一選手のスイング中に共存させることができます。
どちらにせよ、形を作るのではなく動きを補助するためにセンストレーニングを行ってもらうというのが最も効率が良いでしょう。
守備でも同じように身を寄せる動きをしよう
バッティングだけでなく、守備でもこの動きは使えます。
こういった動きの基本は、必ず股関節が重要な役割を担いますので両足を自在に軸足にできるようにしっかりトレーニングすることが大切です。
以上です。最後に重要なのでもう一度確認のため言っておきます。ボールに身(体軸)を寄せることが目的であり、形を作ることを目的にしてはいけません。ここさえ間違えなければ、アウトコースの苦手意識は改善するはずです。