“腕を大きく使え”はホントに正しい指導!?

今回のテーマは「腕を大きく振れ」という指導のメカニズムです。先日指導に行ったある小学校で、投げ方の指導についての質問があったんですね。『大きく腕を開いて投げろって指導は正しいんでしょうか? うちは2人が肘が痛めて1人が肩を痛めているんですが、やはり投げ方の指導がいけないんでしょうか?』これには2つ理由があります。

まず1つめは「運動は健康」という考え方自体がナンセンスということ。野球でそういった指導をする方の多くは “腕を大きく使えばケガはしない”という安直な考えがベースだと思うんですよ。これはラジオ体操は健康になるのか?と全く同じです。

ラジオ体操というのは、身体を大きく動かしているつもりでも、 行っている側の意識や身体の使い方次第で手足を動かしているだけの運動になるんです。手足をただなんとなく動かしているだけでは 内臓が強く綺麗になる、骨力が上がる、関節に負担をかけずに正しく機能する筋肉ができる… はずがないんですよね。

「運動は健康」ではなく「正しく身体を機能させる運動は健康になる」ということです。

投げ方も全く一緒です。 大きく腕を使おうが小さく使おうが、大事なのは身体の奥から正しく使えているかどうかなんですね。

そして2つ目が、形の部分と目的の部分のリンクです。ここが非常に大事です。この指導の場合、形は「大きく腕を使って投げるフォーム」で 目的は「その大きく腕を使うフォームを忠実に再現する」になるんです。これなら、見た感じは大きく投げられますよ。もちろん肩や肘が壊れるリスクは跳ね上がりますが…。(この理由は下記に書いてあります)

センストレーニングの「ボール中心操」はどうなのか? たとえば形の部分が先の指導者さんの 「大きく腕を使って投げる」にしたとしましょう。目的は 「ボールの重心を正確に感知する」です。重心を感じるためには無駄なエネルギーが多方からかかると 身体のセンサーが正確に働きませんからボールの重心がわかりません。

ということは重心を感じるには必然的に超絶的なリラックスが必要になります。

手足は重力に身を任せ、自然とモーションは小さくなるでしょうね。形の部分を「大きく」していますが 目的を「感じる」ことにした場合、自然と痛くない、腕が遠回りしない投げ方になってしまうんです。プロの投手がこれを行うとどうなるか? 『私は腕を大きく開き、ラジオ体操のように投げています』と発言する。

とうぜん一流のプロは 形→「大きく」 目的→「感じる」 結果→「理想的なフォーム」 なわけですから、アマチュア投手にくらべたら肘や肩は壊れにくいでしょう。しかし、このメカニズムを知らずに真に受けた指導者が子供にさっそく伝授すると…。

テイクバックを大きく投げられるようになったが、壊れましたという悲惨な事態が…(泣)つまり、形→「大きく」 目的→「大きくを忠実に再現」 結果→「手足だけに負担がかかる」といったメカニズムになっているからです。私が常々難しいことは考えないで とりあえずセンストレを行ってくださいと言っているのはこういったことが理由です。

形を大きくしようが小さくしようが、強かろうが弱かろうが、 目的によっていくらでも変化してしまうわけです。そして一番怖いのは形を追ってしまい目的を見失うこと! これがスポーツ選手として最も恐ろしい事です。ですから、難しい理論を勉強することも確かに重要ですが 必ず野球は相手に勝つための運動であるということお忘れなく。

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