体が開きやすい打者がチェックしておくべく3つのポイント
まだまだ寒いですからボールを使った実戦形式の練習を本格的に取り入れているチームは少ないかと思います。自主トレでもフォーム作りを目的に素振りを徹底的に行っているって人も多いのではないでしょうか?素振りでもロングティーでも投手との間合いとは関係の無いスイングを繰り返す練習の場合、動作をチェックするポイントがどうしても多くなりますよね。
私もよく「体の開き」について質問をいただくのですが、皆一様に締めこめばいいというわけでも無いので指導が難しいテーマでもあります。しかも、実際に投手と対戦しての試行錯誤ならまだいいものの、バットの振り込みの際に締め込みを強要するのはかなりリスクが高い。
体が早期に開いてしまう選手を見極めるには座標軸で考え、その選手の正面(個人差がある)を知る必要があります。ただこれを正確に見て取ることは指導する側にもかなりの力が求められます。
ここでいう力とは、オープンスタンス転向を的確に助言して選手をブレイクさせることができる指導力や眼力という感じですかね。
ですので、実際に選手へ指導するときはタメが作りやすいような動作を教える方向が安全でしょう。
チェックするポイントは股関節、肩甲骨、脊柱
簡単なイメージでいえば、上半身と下半身が一体となって回転してしまうスイングを直すという方法です。これには3つのポイントがあります。
- 股関節周辺を柔らかくして仙腸関節の動きを整える
- 肩甲胸郭関節(肩甲骨の内側)を柔らかくして肋骨から独立させて動かす
- 自由脊椎以外の脊椎や肋骨を柔らかくする
これらがバットスイングにタメを作るコツとなります。
股関節を柔らかく使えるようにする
股関節の柔軟性は野球には欠かせない要素になっていることは、ほとんどの人が知っているかと思います。近年では骨盤の動きや仙腸関節の柔らかさなどが、よりダイナミックな下半身の動きを引き出すことが注目されています。
とはいえ仙腸関節を無理やり前後に動かしてもダメです。サッカー選手が陥りやすい関節炎になってしまう危険性もありますから注意が必要ですね。
動かしにくい部分というのは骨や筋肉が固くなっていますから必ず前提として「柔らかくなるようにする」という意識が大切です。それから仙腸関節のみの動きではなく、あくまでも身体全体の動きで前後に動くという考えで行うと上手くいきます。
ウォーミングアップで股関節系の調整を行うなら、その場でステップ運動を行う方法が最も適切な負荷でかつ安全に柔らかさを得られるでしょう。お尻を振るように前後左右と股関節を動かしていくようにその場でステップするのは、どんな選手でも有効ですし毎日続けるべきかと思います。
私はその他にも上図の壁を使って行う方法を選手へ教えていたのですが、これはかなり効果が高かったのでウォーミングアップとは別に時間を割いて行うのも良いかと思います。
肩甲骨の内側からバットを振れるようにする
次は肩甲骨です。手でボールを投げなければいけない投手だと肩甲骨の内側がどれだけ柔らかく使えるかが良い球を投げるカギとなる、というのが体感としてわかるのですが、バッターの場合は両手でバットを振るのであまり気づかないポイントでもあります。
そこで、上半身(ここでは背骨、肋骨、肩甲骨と考えてください)が一体となって回転してしまう選手へ私が教えているのが、まずバントの構えでの連続ティーです。
次に肋骨系のトレーニング。
これらを交互に行っていると、肩甲骨と肋骨が時間差で使えてきます。
ポイントとなるのは肩甲胸郭関節です。バットスイングが肩甲骨の内側から行っている感覚が生まれてくると少なくても上半身では開くことは無くなるでしょう。左右両方行いバランスよく鍛えてください。
自由脊椎以外を柔らかく回転できるようにする
最後は脊柱の動き。
軸回転を行うと上半身が一体となって動いてしまう選手は自由脊椎しか回転していないという特徴があります。つまり首と腰ですね。
肋骨が繋がっている部分の胸椎は、肩甲骨共々一体化してしまい実際のバットスイングをみると、かなり淡白な回転運動になります。体が開きやすい印象を与えるバッターはこの自由脊椎以外をどれだけ柔らかく運動に参加させることができるのか?というのが最大のポイントになるんじゃないかと個人的には思います。
では実際に実例をみてみましょう。ここまで解説してきたポイントを頭に入れてこの動画をじっくり、何も言わずにご覧ください。
一流のバッターはこんなに柔らかいんです。このルーティンを真似しても上手くいかないアマチュア選手はたくさんいますよね?端的にってしまうと今回お話した3つのポイントを比較すれば一目瞭然です。
股関節が、仙腸関節が、肩甲骨が、肋骨が、脊柱が…全く違うわけです。ストレッチでは柔らかいんだがいまいちプレーにしなやかさが欠けるという選手は今回の3つのポイントを徹底して見直すと急激にパフォーマンスが向上するかもしれませんね。
体が早期に開きやすいと感じる選手は、無理やり締め込むんじゃなくて常にこの3つを意識して調整してみてください。単純な回転運動でスイングしていたのが徐々に改善され減ってきて、粘りのあるしなやかなスイングができるはずです。