子どもが自主的に練習するために必要な要素とは?
現代の教育というのは「ゆとり」が代表するように「1から10をすべて受動的に教え込む」という従来のスタイルから、「こども本人に考えさせ能動的に判断や行動をさせる」という教育スタイルへ変化しています。これは少年野球でも同じで、強いチーム・良い選手を育てる場合、必ず必要な要素になります。
教えを守ることは必要で大切なことですが、言われたことしかできない人間ほど野球の試合で使えない選手はいません。野球という流動的かつ統合性の求められる競技において、瞬時に形を変えて順応し、次のプレーを適切にできなければ、いわゆる「壁」を越えることはできません。今回は自主的に練習する選手を育てるために必要な要素を解説していきます。
強いチームはどっち?
少年野球の例を挙げましょう。
チームAの特徴は
1.市内でも有名なスパルタ指導である。
2.平日でも必ず指導者が来て遅くまで練習している。
3.ゴロを転がして大振りをさせないように普段から徹底させている。
4.個人ノックなどは平気で20分行う。
5.試合では常に怒っている。
これに対してチームBの特徴は
1.温厚な父兄が揃っている環境である。
2.平日は指導できるお父さんはいないが毎日練習はしている。
3.チーム方針は思いっきりプレーすること。
4.土日は半日しか練習しない。
5.試合ではあまり細かいサインは出さない。
対照的なこの2チームですが、市内の同一大会に両チームがエントリーしたら果たして勝ち上がるのはどちらでしょうか?難しいですか?答えは簡単ですよ。迷うことなくスパルタ指導のチームAです。同市によほどのライバルがいない限り無双でしょう。
パターンやノルマには限界がある
ただ、これが県大会や地区大会、全国大会と進むにつれ面白い事にピタッと勝てなくなるんですよ。惜しいところまでいくのですが勝てない。なぜ市内で無双だったチームが県大会では勝てないのか?この仕組みも簡単です。スパルタチームは時間が許す限り、詰め込めるだの技術を選手へ徹底したからです。
野球センスのメカニズムで、私は上達には技術とセンスのバランスが必要と解説しましたが、このグラフでいうとチームAの技術は10でセンスが4程度でしょう。ちなみにチームBは技術が1でセンスが5程度。これが地区、全国になると相手チームの技術レベルが10なんてチームはたくさんいますから、どこも大差なくなっちゃうんですよ。そうなるとプラスアルファが無いチームは危ないんです。
受動的にやらされている練習というのは、選手の管理もしやすしですし、市レベルだと案外手っ取り早いです。試験勉強なんかもそうですね。範囲が決まっている中間テストなどは徹底してパターンを暗記してノルマを課せば点数はそこそこ取れます。しかし期末、学年末、大学入試・・・となってくると、瞬時に複数のアウトプットが求められる応用問題にひっかかる・・・。これと同じで野球の練習も最初は良い感じで出来るが次第に技術優位でセンスが欠乏してくると、あるレベルに到達すると壁ができてしまうわけです。
自分で創った身体というのが重要
やはり緊張した試合でベストパフォーマンスを発揮するには、やらされている練習ではだめです。自分で考え、自分に聞いて、自分で調整した身体とそこから生まれる動作や発想。これらが真に強いチーム・良い選手を生み出すコツです。しかし、具体的な方法がこれまでの野球界には無かったのでちょっと難しい問題でもありますよね。私が考案したセンストレーニングはこの問題をピンポイントに解決する方法なので、センストレを導入してもらうのが一番早いのですが。指導者の方は普段の練習からちょっとした意識を変えていくというのも良いかもしれませんよ。
たとえば、普段だったら教えたくなるところを教えないとか、野球なんてシンプルにみてしまえばサッカーと同じで、あらゆる場面でいかに1対1で勝てるかですから、バッティングもピッチングも守備も走塁もどんどん勝負要素を取り入れる。そこで、ある選手は勝てない。ではなぜ勝てないのか?勝てるために指導者は環境を整える。こういったことは指導者の意識を変えるだけですぐに実践できますし、技術練習でも同じことがいえます。
自主的に練習する要素は耐えるということ
時間や期間が無いのであれば、スパルタでチームで徹底管理してパターン化させ、ノルマを課せば短期間でそれなりのチームは作れるでしょう。ですが、長いスパンで考えれば、それは真の上達・鍛練ではないですよね。単なる訓練。野球の面白さに気づかないまま競技を終えることでしょう。ゆとり教育も、もっと長いスパンで考えれば必ず1つの文化が築ける程の変化があると思います。が、そこまで耐えることが出来なかったみたいですね(笑)少年野球の指導も大変ですよ。その発した一言でそのこどもの人生を左右するわけですから。ですから、あれこれ指示するスタイルよりも上手くなる環境を創ってあげて、指導者側が耐えるということも重要です。
余談ですが私の指導はひどいですよ。何もしませんから(笑)基本的なセンストレのやり方を教えて子どもがハマりだすまでの環境を整える。あとは皆でワイワイやってくれますから、ベンチで座って監督さんとお話ししているだけ(笑)たまに選手に“混ぜて”もらいますが、基本的には子どもが創った世界を大人の指示で壊さないというスタンスで行います。
もちろん勝負事ではパワーバランスが崩れるというのもありますがね!何てったて強いですから・・・私は(笑)まぁ「遊びこそガチになる」のがポリシーですから、大人げないのなんの。それが子どもにはたまらなく刺激的らしいので、まだまだ体を動かせるお父さん方には毎回行ってもらっていますが。
まとめますと、部活動に参加しているというだけでやる気や熱力はあるわけですから、環境さえ整えれば勝手に練習はやりますよ。そうやって必死になって得た身体は必ず大事な場面で独創的な動作や発想を生み出します。長いスパンで考え、耐えるという事も重要だということを頭に入れて指導してみてください。機会があれば「勝つこと」と「育てること」を上手く共存させる方法なんかも紹介していこうかと思います。お楽しみに