彼のバッティングはココをみよ!早実清宮選手の特筆すべきスイング動作とは?
メールNo.153 配信日2017/06/09
前回は早実清宮選手の凄さや可能性について書きましたが
今回は具体的にバッティング動作の特長などを書いていこうかと思います。
彼が打ったホームランの動画などをみていて『これはすごいな』と思ったのが以下の4つ。
- 揺らぎからくる圧倒的な余裕
- スーッと流れるような重心コントロール
- 踵の粘りによる対応力
- インパクト後の左腕の返しによるパワー
やっぱりカラダは揺すればゆるむ
まず、清宮選手の特徴でもある「構えてからバットを揺すり手腕部をゆるめる動作」です。
一昔前のバッティング指導では、こういう無駄な動きを矯正させられたわけですが
じつはこういうバットを利用した揺すり動作は無駄どころか
ゆるめる前準備を自然とルーティンワークに取り入れることができます(打席に入ってバットを地面に置き、ゆる体操の手首プラプラをわざわざ行うことは常識人はできませんからね…)
投手がモーションに入る直前までカラダを丁寧にゆるめることで、打撃全体の安定感に繋がってきます。
ゆるめるメリットはたくさんありますが、
- 筋肉の弛緩ー収縮の差が激しくなると爆発的なパワーが生まれること
- 精神的余裕が生まれること
野球においてはこの恩恵は計り知れません。
毎試合、毎打席、その揺らぎ・揺すりの質をよーくチェックしていると
すごい余裕があるときなんかは
高い所から投手を見下している(いい意味で)印象を受けるのですが
同じ選手でも「ただバットを揺すってるだけ」みたいな浅いゆるみの時があるので面白いですよね。
もちろん清宮選手に限らずですが。
ジッとして待つのではなく揺らぎ・揺すってカラダをゆるめて待つタイプのバッターがいたらよく観察してみてください。
「あ、打たれる」みたいな雰囲気を出すバッターは揺すりが上手な傾向にありますから。
まるで川の流れのように獲物を捕らえる
つぎは軸足股関節に体重を乗せて
投手のリリースを待つ動作から体重移動までのシーンです。
これもすごいんですよ。
あまりバッティングが得意ではない人や初心者なんかは
体重移動でドタバタするものですが、清宮選手は洗練されている。
よく学童野球なんかでは
『目線を変えず頭の上下動をするな』『頭を残して前に突っ込むな』など
ドタバタする体重移動を矯正する指導をするわけですが
残念ながらこれは一朝一夕でマスターできるものではありません。
なので、ほとんどの選手がコツを掴めずなんとなく打席に入る。
これらは、完璧に軸足股関節に体重を乗せ切らないと始まらないんですよ。
しかも体重を乗せ切るためには
- 足裏と膝と股関節のラインが正しく入らないといけない
- ゆるの重みがないといけない
脚や腰の外側の凝りが強すぎたり、
内転筋が弱かったりなどで膝が外に逃げるとまずしっかりと乗らない。
さらに「揺する⇒ゆるむ⇒重みが発生する」これができないと地に足付かずの体重移動になる。
そういう選手だとお尻(ハムストリングス上部)で体重を支えることができませんので
スムーズに乗せ⇒移動ができず見た感じドタバタするわけです。
逆にこれらができてくると、
ドタバタタイプみたいなハッキリとした動作の切れ目がなくなり
スーッと独特な乗せや移動ができるのですが、清宮選手のそれは完成度が高い!
水がスーッと流れるかのような動きは
なかなかお目にかかれないので、ぜひチェックしてみてください。
踵の粘りがホームラン量産を可能にする??
対人戦の場合、後出しジャンケンのほうが有利になるわけですが
バッティングもギリギリまで見極めて打ったほうが確率は上がります。
(打てる球か打てない球かの選球がきっちりできるだけでも投手は嫌ですからね)
もちろん見極めすぎて
本来の自分のスイングができませんでしたでは意味がありませんから
そうならないギリギリのラインです。
ギリギリのラインをつくるポイントは2つ。
1、上半身のタメをつくる
1つは相手投手に対して手腕部をギリギリまで隠すこと。
テイクバックでトップの位置にグリップエンドがくるシーンで1テンポ置けるかどうか、いわゆるタメですね。
これがないと早期に肩が開きフワフワしたスイングになってしまいます。
こういう「ギリギリまで投手に胸をみせないようにタメをつくる」動作は
スイング自体を「体幹主導」にする必要があります。
「手腕主導」スイングですと、どうしても先に手が反応してしまい肩を開かないといけませんからね(単調なリズムで投げてくる格下投手なら問題ないのですが…)
センストレのストバスみたいに体幹主導でボールを運ぶ練習をしていると
トップの位置で勝手にグリップエンドが後方へ残るようになるのでお勧めです。
2、軸足踵を粘る
もう1つが踵の粘り。
踵が粘れれば、仮にタイミングを外されても
カットしたり逆方向に落としたりと打撃の選択肢が広がるため確率が上がります。
ですが、とうぜん極端に踵を粘りすぎると腰のキレが落ち本来のスイングができません。
かといってまったく粘らないと開きに直結する。
このさじ加減が難しい。
さらに軸足踵は体重移動、軸移動の初動でアクセルとして使いたい。
軸足踵で軸移動のタイミング・強度・方向などをコントロールすれば、
ダイレクトに頭から突っ込むようなドタバタ体重移動にはなりにくいわけです。
清宮選手をバックネット裏から撮影した動画をみてると
長打を打ちながらアベレージも残せる秘密がわかるかと思います。
彼の軸足踵の絶妙な粘り具合・操作は素晴らしいですよ。
ベースがあるからこそ応用ができる
最後はバットの振り抜き感です。
アクシスラボでは
よく捕手側の肩甲骨周辺を使って深い突きをイメージし、押し込むことを推奨していますが
それと併せて清宮選手は「インパクトからフィニッシュまでの腕の返し」がえぐい。
小学生のバッティング指導でも「(右打者の場合)左脇をしめて、手首を返す」のは基本動作として教わりますよね?
左脇を絞めて、右肩甲骨で押し込み、インパクト後に返す。
この型が自然と力が入りやすいのでこれをスイングのベースとしたいわけです。
すべてのボールに対してそのスイングで打てたら最高なのですが、
試合中は相手バッテリーの駆け引きがありますから
常にベストなスイングができるわけじゃありません。
学童野球ならスローボールだけですが
中学生からは変化球もありますし、厳しいコースへ投げ込んでくる制球力も上がってきます。
そうなると「押し込んでも無理に返さずにボディスピンで対応するスイング」みたいな高度な動作が求められるわけです。
もちろん2ストライクまで厳しいコースは完全に捨てて
真ん中から外のボールへ狙い球を絞る打撃スタイルでいくこともあるでしょうが、
追い込まれたら嫌でも対応しなくてはいけませんからね。
なので、高度なスイング動作もできるように引き出しを増やしておく必要があるわけです。
ただ、やっぱベースがあってこその応用。
選手を指導する場合は基本に忠実に
左脇を絞めて、右肩甲骨で押し込み、インパクト後に返す。
体幹主導で肋骨をフルに使った強いスイングをまずは自分のものにすべきです。
ある程度「これならヒットが打てるな」というスイングがみえてきたら
徐々にヘッドを返さずカットするテクニックなど、コース別への対応を練習するという感じですかね。
清宮選手はそのベースのスイングに収束させる技術が並外れてるなと思います。
許容範囲が広いんでしょうね。こういうのは0か100かって問題ではないので、
変化球でも厳しいボールでもベースのスイングに限りなく寄せていく。
もちろん完全に外された・あまりにも調子が悪いときなどは確率がグンと下がりますが
あれだけコンスタントに打ち続けるのはしっかりとしたスイングのベースがあるからでしょう。
小中学生はスイングのベース作りをメインに!
お気づきの人もいたかもしれませんが後半の2つは
公式メルマガでやってる不定期配信シリーズ「機は熟した!俺流センス指導の大原則」の残り2つの・・・
【バッティング(フェーズ2)】
・踵でタイミングを合わせる
・気持ちよくバットを振り抜く
でした。
この2つは学童野球の指導をしているパパママコーチには
ぜひともチャレンジしてもらいたい部分なのですが・・・
実際に私が指導しないとわかりにく部分も確かにあります。
とくに踵の粘りはタイミングを操作するので
ミート力にも直結しますから、ここが出来ると出来ないとでは雲泥の差があります。
かといって、いきなりこの2つを教えても難しくて
ある程度センスのある選手でないと身体操作にもどかしさを感じてしまうかと思います。
「俺流センス指導の大原則シリーズ」は言い方は少々悪いですが
チーム平均以下の選手をチーム平均へ引き上げることをコンセプトに
フェーズ0から順に行うことで、必要最低限の本質力を身につけたカラダを作り上げるのを想定しています。
なので、丁寧に順番通り練習していけばチーム平均まではレベルアップします。
まぁ、何事にも根気は必要ですけどね(笑)