縦振りによるバットスイングの有効性について
最近流行っているバッティング理論に縦振りというのがあります。これはテイクバックをとった位置からバットヘッドを真下へ落とすように振り出す方法のようですね。イメージ的にはゴルフスイングのような軌道を作る振り方です。私はセンスアップ専門家ですから技術的な解説が出来ないのですが、縦振りはセンス的にはどういうメカニズムなのかを知りたいという人向けに解説していきます。
昔はバットのヘッドが下がっているだけで打球の行方に関係なく『ヘッドを立てて上から最短距離で叩くように振るんだ!』などと頭ごなしに注意されていましたが…。そういう点では真逆であるこの縦振りは、従来のバッティング理論とは一線を画す画期的な方法と言えるでしょう。
実際に複数のプロの選手が縦振りの存在についても言及しているようで、少年野球でも流行の最先端をゆくコーチが指導していれば、既に取り入れているチームもあるでしょう。野球技術指導としては榊原氏が提唱する縦振り野球というのもあるようです。そんなホットな縦振りですが、センスの面から見た時の有効性はどうでしょうか?
縦振りで振った場合のバットの軌道を確認してみる
冒頭でも触れましたがイメージ的にはゴルフスイングのような軌道になります。日ハムの稲葉選手も縦振りを意識しているようで、打席でも確認するようにバットを振る動きをしています。
よくドアスイングと勘違いされやすい方法ですが、ドアスイングとはバットヘッドが身体の軸に対して遠回りする振り方であり、縦振りは軸回りに落とすように振る方法です。これを勘違いして解釈してしまうとあまり有効性を感じないかもしれませんね。
バットの扱い方次第でどうとでも応用できる
前出の榊原氏同様、近年は縦振り関連のスイング理論を提唱する方が多いと言われています。従って技術的には理論の数だけ様々なテクニックがあるのでしょうが、センスの面から言えばこれは簡単です。
バット中心操と自中操の2つのタイプがあることさえ知っていれば、スイングの軌道というのはいくらでも応用出来ますからね。
稲葉選手のバットの動きと手腕部の動きを見ていると綺麗に上図Aの動きが現れているかと思います。
ドアスイングというのは、テイクバックで引いたグリップの位置を動かさずに、ヘッドを倒していくように振る動き(上図B)になります。結論を言ってしまうと、縦振りとはAのバット中心操でバットを扱うと勝手にできあがる形です。
バットを軸回りに落とす感覚とは?
縦振りを行うポイントとして『バットを落とすように』と表現されるようですが、実際にスイングを行うとかなり疑問が生じてしまいます。
というのも、スイングする方向はあくまでも投手方向なわけですから、下方へバットを落とすという動きを意識するだけで相当な違和感を感じるはずです。選手が感じるこの独特の感覚も『縦振りは使えないんじゃないか…』と思ってしまう人が多い所以でもあるかと。
でも、実際にプロの選手も行っているわけですから有効性は実証済みです。こういうジレンマはアマチュア選手にとっては厄介ですよね。
プロとは何が異なるのかというと…ズバリ落とすという解釈の違い。ただこれだけ。
縦振りは結果的にバットを落とすものです。これは正しい。しかし、バットが落ちないのに落とそうとしない…ここがポイントです。
要するに、バット中心操でヘッドを中心にグリップ側を動かすというシステムで運動している限り、無駄な力さえ抜いていれば、勝手に自由軸落下が生じヘッドが真下に落ちるといういこと。その流れに逆らわず、小手先で操作しないでバットの動きに身をまかせる…すると、結果的に落とすという形が出来上がるいうことです。
バットの扱い方というのは、ほんの少しの意味合いの違いや感覚の差異によって形を自由に変化させることができる性質がありますから、見た感じの動きを真似してもダメです。ぶっちゃけていうと、スイングの軌道をどうやって操作しようではなく、手に持ってバットを扱うという時点で縦振りが出来るかどうかが決まっている、という方が正しいですかね。
縦振りをマスターするには、重みを感じることから始めよう
では、どうやってこの縦振りを身に付けるのか?ですが…ズバリ重心感知能力を鍛えること! 私がお勧めするのはバットを揺すりながら落下させて『ヘッドはこんなにも重いのか』という感覚を身体に覚えこませ、重いから力を抜けば勝手に落ちるという流れを身につけることです。
技術的な指導テクニックとしては、バットを立てて持たせ正面(体の軸回り)にバットを落とすような感覚で縦に振らせるという方法が一般的です。しかし、バットの重心を落とすということは、そもそも重心を正確に把握していなければ不可能なんですね。でもここが難しい。
人によっては『俺はかなり力を抜いて落とせているぞ』と思っていても、実際はかなり力んでいて重心を感知していないどころか、動きもぎこちなく窮屈にスイングしているということが起こってしまうわけです。
これらを無視してスイングの軌道だけ縦振りを真似してみると、単なるダウンスイングや遠回りしたドアスイングになるのがオチですからね。だからしっかりトレーニングを行っておかないと縦振りは出来ないでしょう。
バットのヘッドも自分の腕も重いと感じているか?
なかなかうまく出来ないという人にイメージしてもらいたいことがあります。人間は寝ていたり泥酔していると普段よりも重く感じるというように、力を抜けば身体は重く感じます。バッティングでも同じようにリラックスが上手く出来ると、身体は良い意味で重く感じてきます。
バットのヘッドが上手く落とせないという人は、問答無用に力が抜けていないのですが、この抜く=重くなるというイメージを持つと良いかもしれません。バット中心操で揺すって落下させるときも脱力と重みを意識すると上手くいく選手が多いのでぜひ試してみてください。
縦振りについてのまとめ
- バッティングにおいて非常に有効である
- 軌道を無理に操作するのではなくバットの扱い方で決まる
- 落とすには脱力と重みを感じる必要がある
以上です。色々とメリットのあるスイング理論ですからしっかり理解して自分のスイングにアレンジしてみるといいでしょう。