なぜ空手チョップのイメージではダメなのか?

バッティングで後ろ手の押し込みを指導するときに「空手チョップ」をイメージさせる指導者の方が多いのではないでしょうか?私のセンス理論でいうところの「押し」ですね。これまで私はこの押し込みについて色々解説してきましたが、「空手チョップのようにスイングしなさい」とは一度も言っていないのに皆さんお気づきでしょうか?これは記号的な意味で総称するためではありません。

私が後ろ手の押し込みを「肩甲胸郭関節からの深い突き」と表現しているのには、じつは明確な理由があります。バッティングを上達させようとしたとき、センスのある選手とセンスの無い選手への指導には異なる部分が多々ありますが、今回は「突き」の動作とイメージについて少々解説したいと思います。

素人の空手チョップは瓦1枚ですら割れやしない

私がこのイメージを指導しない最大の理由が「意識」の問題です。空手チョップのイメージでと教えると、どうしても肘から先に意識が集中してしまうんです。センスとは身体の奥に近い部分を主導に使えることですから、末端を主導に身体の奥を従属させる動作というのはリスクが高いわけです。いわゆる小手先の操作に陥り、力のない手打ちになる危険性があるということです。これは何度も解説しているように、センスの無い選手が最もやってはいけない要素の1つですね。

この押し込みというのは簡単に言ってしまえば、投手のボールに押し負けないようにするためですから、「重み」や「力強さ」「安定感」といった確固不抜な押し込みが必要になります。こういう面を考慮すると、小手先での空手チョップほど“軽い”ものはありませんよ。ここは皆さんも注意して観察してみてください。バッティングで手打ちになる選手ほど、この小手先チョップになっていますからね。

本物のチョップは肩甲胸郭関節と1本のラインで繋がっている

ズシっと重みのあるチョップは肘から先だけでは生まれません。投手が投げるボールにも球速表示には表せない「重いボール」というのがありますが、重みのあるチョップを打つというのも同じメカニズムです。では、この重みはどこから来るのかというと「運動に参加しているパーツの数」というのが最もイメージしやすいでしょう。

手・手首・前腕・肘の4つのパーツとそれらに加えて、上腕・肩関節・肩甲骨・肋骨が運動に参加した場合、エネルギー面で大きな違いが生まれます。とうぜん肋骨や肩甲骨付近はたくさんの筋肉群が存在しますし、人体の中でもこんなに大きいパーツはそれほど多くはありません。そんな大きな部分がしっかり運動へ参加したら、末端へズシっと重みが伝わるのは想像できるかと思います。従って肩甲胸郭関節と手を繋ぐことが重要になってくるんですよ。

センスがあるヤツはチョップでも可

結局、センスがある選手というのは肩甲胸郭関節を主導に末端を従属させる動きができているわけですから、チョップのイメージでも深い押し込みができてしまうんです。でも、センスが無い選手はそうはいかない。空手チョップのイメージでスイングすると面白いように脇が締り、肋骨の動きが死んでしまう。もっとひどい選手だと、肘がロックされてバットを肩上からスパッとボールを切りに行ってしまう。

こういった打ち方を「コンパクトなスイング」「最短距離でボールを叩く」と美化していますが、センスがある選手はこんなことしていません。見た目が同じようにコンパクトでも身体の奥が使えている比率が、センスの無い選手のそれとは比べ物にならないんです。ここは見た目や先入観で指導してしまう方は注意が必要ですね。

石川が指導する「ストバス」とは?

無料で公開している動画「ホームランの打ち方」でセンストレの「ストバス」が収録されていますが、これは本当に良いトレーニングですよ。本当のところは、無料で公開していい練習方法では無いんですが・・・。このストバスというのはあらゆるものが凝縮されていて、アレンジの仕方によってはプロの質の高い技術練習と双璧をなすセンス練習となります。

今回のテーマ「空手チョップのイメージ」の答えはこのトレーニングにあると私は思っています。センスのある選手は前述の通り、チョップでもパンチでも自分の身体と意識にフィットすればどんなイメージでもいいんです。問題は肩甲胸郭関節と親指と人差し指の間のライン(詳しくは一般公開していません。機会があれば公開しようかと思っています。)までが繋がっていないこと!これができないと重みが感じられない押し込みになり、手打ちの罠から抜け出せないでしょう。夏までにストバスをフル活用して「深い突き」を押し込めるようにしておきたいですね。

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