バッティングで力を抜くということの意味とは?

以下、無料メール相談で先日ご相談頂いたメールです。

「初めてメールします。息子は小学校6年生で学童野球をしています。右投げ左打ちでポジションは主にレフトを守っています。ほぼ毎日家でティーバッティングをしているのですが、どうしても力が抜けたスイングというのができません。」

「監督、コーチからは、構えでヘッドをピッチャー方向に入れて勢いをつけてスイングしろと指導されているようですが、ヘッドが入ると余計に力が入ると思うので、バットを寝かせてそこから振り出す方がリラックスできると思うのですが、実際はどうなんでしょうか。たいへん基本的なことで恥ずかしいのですが、リラックスしたスイングはどのような指導をすればいいですか?」とのこと。

構えは人それぞれ違うから何だって良い!・・・って訳じゃない

実際にスイングを映像で拝見したわけではないのですが、メールをした感じではどうやらバッティングフォームについて本人は相当悩んでいるようです。私は常々どう打つかではなく、どういう身体の状態で打っているのかを考えるべきと言っていますが、まさにこの例がそうですね。6年生でレギュラーなら技術的にはチームでも平均以上ですから、問題は技術的フォームではなくセンスとのバランスです。

ただ、このセンスと技術的なバッティングフォームというのがかなり厄介で指導のさじ加減が難しい所でもあります。最近は「フォームは何だって構わない」という教えが流行っていますが、これも誤って解釈してしまうととんでもないことになってしまいますから注意が必要です。

たとえば、構えのシーンで「なんとなく構えました」という意識で出来上がったバッティングフォームと、「ボールを打つと思って打ちに行った」意識で出来上がったバッティングフォームとでは、同じ「フォームはなんだっていい」で構えていてもメカニズムが大きく変わってきます。ここは誤解されている方が多いのでハッキリ言っておきますが、バッティングという身体運動を行っている以上なんとなく構えるということはやってはいけません。

「ただただ相手を打つ」意識で、尚且つ構えは何だって良いというスタンスをしっかり自分の中で確立してください。それが出来ないのでしたら、ぶっちゃけ技術優位つまりご質問者様のチームの監督に教わった技術的なバッティングフォームを徹底的に練習した方が打てます。(技術とセンスのバランスはセンスのメカニズムのグラフで考えてください)

手の力みを徹底的に排除しないとダメ

どういう構えが良いのかについて解説しましたが、次は本題の「リラックスしたスイングはどのような指導がいいのか」ということですね。これはズバリ「手」です。まずは手をどれだけ柔らかくできるか。手とグリップの関係を改善することが無駄な力が入ったスイングから抜け出す最善の方法です。

手の骨のレントゲン図
骨と骨の間を柔らかくすることが
力みのない握りへ繋がる

近年では、小学生でもバッティンググローブをしながらスイングする選手がかなり増えてきていますよね?最近のバッティンググローブはグリップ力に優れていて、ジュニア向けのセカンドラインの皮手でも、バットと手のフィッティングが上手くいく構造になっているのですが、じつはこれ結構危険なんですよ。「素手で打った方が絶対良い」というプロ選手が多いように、バッティングは手が持つ感覚や意識というのを大事にしなければダメなんですが、それが出来ない・しない打者が最近増えているということは指導者サイドも注意が必要です。

これは本質的な力ですから、たとえどんなに優れたバッティンググローブを使用したとしても、手そのものが道具に密着するような関係に無いのならパフォーマンス向上はあり得ないということです。ただ、勘違いしてほしくないのは小学生の内から皮手を使うなと言っているわけではありません。

贅沢しながら上手くなる

たとえば、日本ほど練習環境に恵まれていないキューバの選手は、肩も強くてパワーがあってスピードもあります。恵まれない環境での練習では細かい技術を覚える事ができないのですが、逆に打つ・投げる・走る・捕るという本質的な力が自然とつくわけです。日本の小学生は一般的には、ほとんどが道具も場所も整っていますから、きちんと技術練習を行えるわけです。ですが、それと同時にキューバの選手のような本質的な力は育ちにくいという構造です。言い換えれば日本の環境は技術、キューバはセンスという感じですね。

じゃ、日本の小学生はセンスが足りないんだから、今の恵まれた環境を捨ててキューバと同じ環境水準で練習させよう!・・・ってなったら、とうぜん誰も賛同しませんよね。バットもミズノやナイキじゃなくそこら辺の木片、グローブもボールも新聞紙・・・。何が言いたいのかというと、優れた道具はどんどん活用しろってことです。バッティンググローブも、密着感をアシストしてくれるわけですからどんどん使った方が良い。使った方がいいのだけど、同時に手も柔らかくする。手と道具の関係を常に意識して反発させない、手の中でグリップをズレさせない。こういう贅沢な上達方法を選んでください。

グリップのにぎにぎで手を調整しよう

話が逸れましたが、ではどのように手を柔らかくして、力みのないスイングをマスターするかを解説しましょう。一番お勧めなのは構えた時に手を握ったり広げたりすることです。にぎにぎしながらボールを待つ選手がいますが、あれを少しアレンジしましょう。まず、意識すべきは手根骨と中手骨。掌の部分ですね。五指でにぎにぎしてしまう選手がいますがこれではグリップと密着しませんので、必ず掌の部分を意識してください。イメージ的には「柔らかく・まとわりつく・隙間なく」です。最初は力が入り、前腕部の力みでにぎにぎしてしまいますが、やわらかくスライムのようにトロトロにくっつけながらにぎにぎしていると上手くいきます。

すでにヒットが打てる技術レベルがあるなら、この手とバットの関係を改善するだけで見違えるはずです。道具に繋がっている手が変わると、手だけではなく全身が変わってきますからね。そこまで徹底してにぎにぎを行うといいでしょう。たったこれだけですが、ものすごく効果がありますから必ず行った方がいいですよ。小学生でも簡単に出来ますし、指導者側も「掌の部分を触って確認させて、その部分をグリップにやわらかくにぎにぎするだけ」という指導のみで済みますから楽です。最後にまとめとして確認しますが「力を抜く」という意味を、自分の感覚のみで選手へそのまま言葉で伝えてもダメです。手をグリップに密着させて、はじめて力を抜くということを体感するので、これは小学生の内から当たり前のように行っておきたいですね。

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