少年野球でマスターしたい投げる能力
最近の少年野球では、いわゆる「遠投」というものを行わないチームが多いようですね。ひどいチームだと塁間を越える距離は投げさせないというルールもあるそうです。塁間以上を投げる練習をしないでどうやって野球をやるのかかなり疑問に思いますが・・・。市レベルの大会をみていても、私が小学生だった時よりもキャッチャーの盗塁阻止率が明らかに低くなっている気がします。
もちろん強いチームには「投げる能力」が高い選手はいますが、チーム平均でみた場合、三遊間の深い位置からのスローイングや外野からの返球も満足にいかない選手が多くなっているのは事実でしょう。ある指導者の方は「肩は消耗品だから、小学生のうちは投げさせないのが現代の少年野球の主流だ」とおっしゃっていましたが、ここはちょっと考える必要がありますね。
投げるという能力が野球センス、主に上半身の高度なセンスに直結していることを認識する必要があります。今回は投げる能力の低下が野球の低次元なパフォーマンスを招く理由についてお話しします。
投げる事に制限をかける必要性!?
肩は消耗品、これについては私も同じ考えです。やはり生身の肉体ですから生物学的に限度があるでしょう。筋力や骨格に個人差があり1週間で何球までが限度というのは一様には設定できないはずですが「きついならやらない」スタンスは推奨すべきです。
ただ遠投否定派と私が大きく異なる点が「投げる能力」が無いレベルで投球数の限度云々を語るなという点です。たとえば、友達との何気ない鬼ごっこや、悪ふざけはどうでしょうか?我々大人の感覚でいえばアップ無しでの全力疾走ほど、身体に害がある動きは無いのではないでしょうか?しかし、彼らは「あー疲れた」と言いつつ次の日はケロッとしている・・・。私から言わせれば、走るのだって投げるのと同じように一日の走行距離を制限しなくていいのか?ということ。でもこんなことにいちいち制限かける人はいませんよね?
投げるだけが特別じゃない
じゃ何故に投げる動作だけ危惧されているのか?投げるという動作だけが高確率で身体を壊すのか?そんなはずはありませんよね。それほどまでに危険な動きなら、野球という競技自体が数年で廃れ、今ごろ忘れ去られているはずです。そうです、投げるだけが特別じゃないんです。アップ無しでいきなり全力疾走しても何ら問題ない子供たちですから、投げることもわけないんです。が、指導者はそうはいかない。
遠投反対派の指導者の方は「投げ方を教えるのには「知識」や「経験」が必要だ。あれこれ教えて肘や肩が壊れるくらいなら、いっそ投げること自体に制限を・・・。」という流れでしょう。実際にあれこれ教えてしまう指導者に限って選手の故障率は高まっていますからね。理想は鬼ごっこと同じようにアップ無しで全力投球ができ、次の日はケロッとしていればいいわけですが・・・。
アップ無しで身体を痛めない理由とは?
果たしてそんなことが可能なのか?私は可能だと思っています。ここで皆さんに質問です。鬼ごっこで次の瞬間全力で走れる子供はなんで身体を痛めないのでしょうか?わかりませんか?答えは簡単ですよ。走る前に「アップをしているから」です(笑)え!?いつ行ったかって?行っているじゃないですか!・・・。落ち着きのない日常こそまぎれもなく身体を温める最良のアップ法ですよ!彼らはいきなり走っているのではなく、身体はポカポカ、既に「ピーク」に達しているんです。
察しがいい方はもうお気づきですね。はい、そうです。野球という部活動になると、これがピターッと落ち着くんですよ。まるで何かに怯えているかのように(笑)本当にセンスのあるガキンちょは酷いですよ。わがままで大人の言う事をききませんから(爆)
動から動、静から動がカギを握る
つまり、「動」から「動」で運動が出来る子供が、野球という部活動の「投げる」動作になると「静」から「動」に変わってしまうということです。これは複数の要因が考えられますが、最もわかりやすいのが野球経験者のコーチが教える「投げ方」です。すべてがダメというわけではありませんが、多くの指導者は「静」から「動」の投げ方を「基本」と称し、型をつくり込んでいきます。
そうい身体の状態で遠投すればそりゃ痛めますよ。言ってしまえば自分本来の動きではなく、つくられた偽りの運動システムなわけですから。じゃどうすればいいのか?普段から上半身のアップが済んでいる状態を作れればいいんです。そういう身体を創るチーム練習法や「動」から「動」のシステムを崩さないように指導する方法やチームの環境を整える事を選択すればいいわけです。
「使えるけど使わない」と「使ってないから使えない」は違う
ここを間違えている指導者の方が多すぎますね。投げ方は教えていいんですよ。野球技術は野球をやる上で必須なわけですから。どんどん教えるべきです。ただ、「動」から「動」のシステムを崩さないようにフォームを指導するならという条件付きではありますが、どうしてもこれができない。だから最初から投げさせないわけです。
私が指導しているのはフォーム的なことではなく、「アップ済み」の身体の調整法と「動」から「動」の運動システムを崩さないように気持ちよくボールを投げられるようにすること。ただこれだけです。こういった身体があり、高度な上半身の使い方はできるとしたうえで、敢えて「投げさせない」のならいいのですが、壊れるから最初から投げさせないというのは指導者の勉強不足ですよ。
この投げる能力は、バッティングでも守備でも走塁でも、もちろんピッチングにも影響しますから、小学生のうちに“基本”をマスターしておきたいですね。機会があれば詳しく取り上げていきたいテーマですのでお楽しみに!