バッティングで身体の居着きは禁物
動画の撮影当時で中学3年生だそうです。高校生のスイングと見間違えたほど普通にスイングしていますね。将来が楽しみな選手です。打撃マシン相手でタメの練習をしているのか、元からこのような動作が入るのかわかりませんが、前足の着地後に身体がその場に居着くのが惜しいですね。このようなスイングを行っている選手、教えている指導者の方も多いかと思いますが、じつは思ったほどタメは作れなく逆に変化球への対応力が下がりますので注意が必要です。
この少年のバッティング練習でも見る人が見れば感じると思いますが、彼が本来持っているであろうポテンシャルからすると非常に窮屈な印象を受けます。これをやるんだったら、むしろノーステップ打法で体軸をフリーに操作できる状態でボールを待つべきでしょう。
バッティングのタメは動作を止めるという意味ではない
よく勘違いされやすいのはタメという定義。バッティングのタメというのはグッと踏ん張ったり、体重移動をブロッキングしたりしたからタメが作れるという意味ではありません。力を適切な分だけ抜くと、足首よりも膝、膝よりも股関節、股関節よりも腰、腰よりも肋骨・・・というように、下から徐々に残ることをタメというんです。ここで大事なのは「残す」のではなく「残る」ということ。後ろに引いたからといってもタメを作ることはできません。力を適切な分だけ抜いた結果、筋肉の重みが感じられ徐々に残っていくという現象が生まれるんです。
そういう性質を利用できるバッターはインパクト前後の間合いの調整が非常に優れています。一般的なバッティング指導でいうと「打つ前にわずかなタメを作る」というやつですね。体軸をその場に居着かせたからタメが作られるのではなく、力を必要最低限まで抜ける能力があるからこそ調整ができるということです。
一番わかりやすいのは、身体を揺すって構えてそのままゆらーっとインパクトまで一筆書きのようにスイングする動作。柔らかく揺すりながら一筆書きというのがポイントで、「1・2・3」というリズムでは、間合いの調整が難しいんです。ゆらーっと軸を操作できれば、たとえ速いボールが来ても十分に対応できますからね。ノーステップ打法のメリットは実はここにあります。バッティングでの体軸は、どれくらい動いたか?は重要ではありませんので、わずかでもゆらーっとインパクトまで一筆書きの動きが出来ていれば、必要なタメは十分に創れるはずです。