コンパクトなテイクバックをマスターする!!
テイクバックで腕を大きく使うは間違い!?

少年野球のピッチャーへ教える基本を紹介します。

肘を曲げて肩を柔らかく使うように教えよう

最近は『テイクバックは両腕を大きく開いて投げなさい』という指導が廃れてきました。肘を伸ばしたままトップへ手を持っていく形を「アーム投げ」と呼び、これは投球効率を下げるばかりか腕への負担も大きいという事が常識となってきているからです。

少年野球の主流もコンパクトなテイクバックという認識で構いません。

私がポイントと考えているのは“機械的な動きと柔らかさを上手く融合すること”です。

肘は90度の形で引き上げるのが理想だが・・・

テイクバックの形はアーム投げより、直角に近い肘の角度で引き上げたほうが効率がいいでしょう。ただ気を付けてほしい点が1つあります。固定的な支点を作らないことです。建物と違って人間には自由性の高い関節という機能があります。それを無視して、まるでボルトで締めたように固定してしまうとそこへ負担が集中します。

少年野球のピッチング指導ではケガを未然に防ぐことが求められますので、固定的な支点を作らないような腕の使い方をどれだけ上手に教えられるかが重要となります。

この「機械的(力学的)な形の有効性と人間特有の柔らかさ」を上手く融合することを子どもに教えれば最高のテイクバックが出来上がります。私はピッチャーへフォームを教えることは殆どないのですが、以下の3つは効果が高かったのでかなりお勧めします。

  • 肘と肩甲骨の連動を教える
  • 引き上げの感覚を覚える
  • トップをつくるときの肘の柔らかさをつくる

ポイントとなるのは「肩甲骨」「肘」「脇」の3つです。

テイクバックを指導中は「肘の直角の形」と「ぐにゃぐにゃな支点のスライド」の2つを指導者は意識していくのですが、割合でいえば形2、柔8くらいでも大丈夫でしたので、まずは柔らかさを優先してください。

肘と肩甲骨が連動して動くという感覚を覚えこませる

固定的な支点を肘と肩関節にいかに作らないかがポイントとなります。

まずは腕全体を柔らかく動かすという感覚を子どもに覚えてもらいます。もっとも簡単なのが肩甲骨の自由性を利用して肘と連動させる方法。

ヒップホップダンスでハンドウェーブという技がありますが、腕全体の連動という意味では非常に参考になります。

もちろん、テイクバックでこの形を真似しろという意味ではなく(腕を伸ばしたままだとアーム投げになる)肩甲骨と肘の柔らかさを覚えこませるという意味で有効ということです。とうぜんダンスを本格的に行ったほうがいいということではありませんのでお間違いなく。

こういう動きは子どものほうが上手ですから、どんどんやらせてみて遊びの中で「柔らかさ」という感覚を覚えさせるのがコツですね。

脇を柔らかく使い肋骨と肩甲骨を別々に動かす

ハンドウェーブが上手い人は、肋骨から肩甲骨が離れる自由度が高いという特長があります。

つまり一体となって動いていると別の生き物のような動きには見えないということ。肋骨から肩甲骨を独立させて動かすように促すことが指導のポイントになるでしょう。

脇を意識させて肩甲骨・肩関節・鎖骨の3つを浮かせるように動かすようにイメージさせると、テイクバックでスムーズに肘が上がりやすくなりますので試してみてください。

テイクバックの肘の柔らかさを覚える

それから、ハンドウェーブのような肩甲骨側から肘を連動させる動きとは逆に、肘中心で肩甲骨を連動させる方法も有効です。

テイクバックでアーム投げになるという場合は、この方法でキャッチボールを行ってください。これはかなり実戦に近いので効果が高いです。単純に肘だけを回すのではなく『肘を回したら勝手に肩甲骨も動いた』くらい力を抜かないと上手く連動しません。

肘を高く引き上げるための指導

テイクバックでの肘の高さや形は、肩甲骨に可動域があるのかも問題になってきますので教えるのが難しい部分でもあります。

私がよくやるのは、ハンドウェーブで肩甲骨と肘の柔らかさを覚えてもらったら「力を抜いている状態で肘が上がる感覚を覚えてもらう」方法です。

やり方ですがこの方法は2人1組で行います。選手は肩幅で立ち、指導者は選手の背中側に立ってください。

選手の両脇に手を入れ支えます。選手はその支えに体重を預けるようにして重心をゆっくり下げていきます。リラックスして行うと肩甲骨が上方へズレますので、軽くテイクバックの形をとってください。その“リラックスしているのに肘が上がる感覚”がテイクバックには必要になります。

この方法でも肋骨から肩甲骨が離れるようにするのがポイントになります。

トップは手の甲の向きよりも肘の動きが大切

少年野球のピッチング指導では、テイクバックからトップへ持っていくシーンで手の甲をキャッチャー側へ向けるようにする指導が行われていましたが、トップでは肘の動きが手の向きよりも基本となると私は考えています。

テイクバックで肘を引き上げボールを持った手を上方へ持ってくるという動きの中で、どうしても肩関節に固定的な支点が生まれやすいからです。

1つ目のハンドウェーブが上手い子どもは自然と出来るのですが、肩甲骨が柔らかく動かないと支点を固定する傾向があります。

手を上げると肘が若干下がるという動きを覚える

私がよくやるのが手を選手の手に軽く乗せてテイクバックからトップまでの動きを行わせることです。

やり方は、まず腕をまっすぐ水平に伸ばします。そこからぷらーんと肘を曲げテイクバックの形を取ります。選手の手に軽く触れます。このときに負荷をかけすぎると危険ですのであくまでも意識付けとして乗せるようにしてください。

手が乗っているとそれを持ち上げるようにしてトップを作るのですが、このシーンでは肘の動きをみてください。各関節を固定して肘の位置が変わらず持ち上げようとしているのか、肘を若干下げるようにしながら手を上げているのかをみます。前者は支点を固定的に、後者は支点をスムーズに動かせているということ。

ハンドウェーブで上手に肩と肘が連動できる子どもは簡単にできると思います。このシーンで肘が下がるのはじつは自然だったということですね。

ピッチャーは0から100のイメージを持つことが大切

最後にSTEP3のまとめです。テイクバックでは「形」と「柔らかさ」を上手く融合することが大切だということでしたが、ここでも大前提としてリラックスがあります。

よく優れたピッチャーは「0の力で投球動作を行いリリースで100の力にする」というような表現を使いますが、これは少年野球でも教えるべきでしょう。

もちろん、腕で力むという意味ではなくボールにロスなく力を伝えるという意味での100です。従ってピッチングは終始リラックスしてエネルギー伝達のロスを減らすというのが本来の意味でしょう。テイクバックは腕を操作する割合が高いシーンでもあるので力みやすく、せっかくいい形を作ったとしても力がボールに伝わらないケースが多いです。

固定的な支点が増えれば、それは力みへと繋がりロスを生み出します。柔らかさと形を上手くリンクさせるというポイントを抑えながら上手く指導してください。


テイクバックで気を付けるのは・・・

  • アーム投げにならないようにコンパクトな形を作ること
  • 固定的な支点を作らないようにすること

この2つは普段のキャッチボールから心がけるといいでしょう。