スムーズな体重移動を覚える!!
軸足の股関節&踵でプレートを踏み込む
重みをキープしたままキャッチャー方向へ移動させます。
重みを持った体重移動を教えよう
リラックスしても軸足のバランスが取れるようになったら、次はその状態のままキャッチャー方向へステップ足を踏み込んでいきます。
ピッチングでは軸移動や体重移動と表現されるのですが、この移動の仕方にも気を付けなければいけません。
体重移動のイメージとは?
結論からいうと『靴何足分のステップで踏み込む』『お尻からキャッチャー方向へ進む』という形だけではダメということですね。
たとえば、目一杯の助走ありで投げる場合とノーステップで投げる場合では球威が違ってくるのは何となくわかりますよね?
では、想像してみてください。水が入った重さ40キロの袋が勢いよくあなたの方向へ突っ込んできたら・・・かなりの衝撃で後方へ吹っ飛ぶでしょう。さらに4、5歳の子どもが熟睡状態でのぶにょぶにょした重量感で移動してきたら相当なエネルギーが生まれます。これがピッチングの体重移動のイメージです。
この「重みをキープしたままキャッチャー方向へ移動」することを子どもに教えればいいわけですね。私のおススメは3つ。
- 上体を倒して股関節に重心を置く
- 踵で移動方向を安定させる
- バランス感覚を鍛えながら体重移動する
体重移動の指導でポイントとなるのは「股関節」と「踵」の2つです。大前提としてリラックスしたときの重みがありますので、そこはしっかり確認させてください。
軸足の股関節に乗せる感覚を覚えさせる
少年野球のピッチング指導では『股関節に乗せるという感覚が大切だ』とよくいわれています。STEP1で脚の外側に乗らないように立つことが大切であるということを解説しましたが、これは完全にリンクしますね。
骨格標本などをみたことがあって股関節の位置を正確に知っているという人はわかると思いますが、思ったよりも内側へ位置しています。ですので。腰の横や脚の横に体重が掛ってしまうという子どもは股関節に乗っていません。
股割りや開脚などで股関節周辺の筋肉をストレッチするのも良いのですが、私が指導しているのは骨盤の前傾です。上体の軸を連動させることで股関節に重心が乗りやすくなる。
股関節周りの感覚を養う
基本的な前傾のやり方は動画で紹介していますのでご覧ください。
この前傾をベースに行います。まず左手にグローブを持って(右投手の場合)セットポジションの形を取ります。
肩幅に脚を開いて、軽くSTEP1のイメージトレーニングを行いましょう。足裏がベターッとくっ付いた立ち方になってきたら前傾を行います。股関節からしっかり倒してください。
頭から仙骨までをまっすぐ意識しないと腰痛になりますので注意してください。
セットポジションの形の両腕をそのままダラーンと地面へ下げます。膝は気持ち軽く曲げるといいでしょう。骨盤を前傾させ、上体の軸を連動させて倒すことが目的です。倒す角度は個人差があるのでここではあえて明記しません。
骨盤前傾と同時に、両腕を気持ちよく真下へ下げたら、今度はそのままグローブの位置を軸足の前まで移動させましょう。このときにグローブだけ移動させるのではなく、上体も一緒に軸足の前へ移動させます。
骨盤の前傾をゆっくり戻します。グローブがセットポジションの位置まで戻るようにしてください。
ポイント
- 腰の横に体重がかかってないか?
- 膝の裏が伸びきっていないか?
ポイントは2つ。軸足の前に移動するシーンでしっかり骨盤から倒せていないと、体重が思った以上に外側へ乗ってしまいます。腰の横に乗らないようにしっかりとお尻で立てるようにします。膝の裏が伸びきってしまうのもあまり良くないので気持ち曲げるようにするといいでしょう。
踵でプレートを踏み込む練習
2つ目の方法は移動する方向の調整を覚えさせます。
イメージでいえば、アウトコース・真ん中・インコースの3方向へ「スピード」と「威力」をコントロールしながら体重を移動させるという感じです。真っ直ぐ移動させる(真ん中)だけでも、もちろん構いませんが、安定したピッチングは下半身の粘りから生まれると言われていますので、ぜひ3方向への体重移動をチャレンジしてみてください。
1つ目の方法で骨盤を前傾させて軸足側で上体をゆっくり戻すという動作を行いましたが、上手くできれば「お尻で体重を支えるようにセットポジションができる」と思います。主観的にはスッと力みなく立てる感じです。
バッテリー間のラインを引く
次に踵から3方向のラインを引いてください。これはイメージで構いません。踵から引くのがポイントです。
踵でプレートを踏み込むようにして体重移動を行います。このときに大切なのはつま先側を浮かせないこと。踵で踏むとつま先が上がる人は、踵でプレートを踏むという動きが出来ていません。
つま先側がまるで、ぬかるんだ土にべったり埋まってしまったくらい力を抜くのがコツです。このつま先側を抜いて踵で立つというのは、STEP1の軸足のトレーニングを行っていれば感覚がわかってくるかと思います。
そうすると1つ目の骨盤前傾で意識した軸足の股関節と踵が連動します。つまり踵でプレートを踏むと同時に股関節が捕手方向へ押し出されるようにして移動するという流れです。拇指球でプレートを押すと股関節と連動しにくくなるため、骨盤前傾とセットで踵の踏み込みを考えると上手くいくでしょう。
ステップ足が地面に着地するまで踵を粘るのが良いピッチャーと言われていますので、踵+股関節での体重移動が自在にコントロール出来るように教えてください。
軸足からステップ足の股関節へ体重を移す
3つ目はこれまでの動きを動的にバランスを取りながら行います。
まず壁に背を向けて立ちます。ステップ足を捕手方向へ踏み込んで腰を壁にくっつけるようにして支えます。ちょうど腰割りの姿勢になる程度がいいでしょう。
次に、上体の軸を軸足の股関節の前へ移動させます。膝が外へ割れないように気を付けてください。このシーンで外へ乗るという人は骨盤の前傾を行うといいでしょう。
軸足の股関節に体重を乗せたら、上体の軸をステップ足の股関節へ移動させます。壁に腰を擦りつけるようにするのがポイント。壁から離れてしまうとスムーズにできません。
アンバランスの中で重心のコントロールを覚えさせる
壁で支える方法で軸足股関節からステップ足股関節への移動になれて来たら、こんどは壁から人の背中に変えて行います。背中を合わせて行うと壁より安定しないため、かなりバランス感覚が求められます。
股関節ではなく腿の前を使ってしまっている場合は、腰の位置を高くして頭の上下動を極端に減らすように教えてください。そうすることで軸足からステップ足への体重移動の感覚がわかってきます。
インエッジ・アウトエッジはどちらが正しい?
最後にSTEP2のまとめ。プレートの踏み込み方・蹴り方というのはコーチによって様々な考えがあるでしょう。インエッジで膝を送り込むや、アウトエッジで勢いをつけてからステップするなど。何にせよ体重移動で大事なのは「重みを捕手方向へ移動すること」です。
まずはリラックス。次に股関節で支える。外側に乗っているようじゃ全然ダメ。最後に移動するタイミング・力加減・方向を自在に操れること。この3つができれば何だってかまいません。べた足でもインエッジでも条件さえ整っていれば、そこまでこだわる必要もないはずです。
体重移動の3カ条
- リラックッスして重みを感じること
- 重みを股関節に乗せていること
- タイミング・力・方向を自在に操作できること
所属する少年野球チームに優れた投手コーチがいれば、これをベースに教わったテクニックを上乗せしてください。コーチがいなくてさらに野球の経験がないお父さんは上記3つのポイントは必ず抑えてくれれば大丈夫です。
ぜひ試してみてください。粘りのある下半身があればナイスピッチングはもうすぐですからね。