自中操からバット中心操に変えるにはどうすればいい?

私が提唱するセンス理論でのバットスイングには2つのタイプがあります。それらは「自分と道具の関係性」によって変わってくるということをこのサイトでは解説し続けていますよね。実際の試合ではどちらもメリットがあるので理想的には、状況によって両方使い分けることができるというのが望ましいんです。ただ、打率を上げるにはバット中心操が圧倒的に有利ですのでアドバイスを求められたら私は自中操よりもそちらをお勧めしています。

センストレの裏のメカニズムVo.1

メール相談でこのバット中心操についての質問を多く頂きましたので、いくつかアドバイスさせていただきます。同じような悩みを持っている方にもできるだけ参考になるように、わかりやすく説明できればと思います。

改めて両者のメリット・デメリットをまとめてみる

まずは2つのバットの扱い方を確認しましょう。

バットの扱い方-2つのタイプ

この図でいうと、Aがバット中心操でBが自中操です。

バットのヘッドを中心にグリップを積極的に動かすのがAのバット中心操です。これはバットを立てて構えていようが、寝せていようが、はたまた水平にポジショニングさせていていようが、ヘッドを中心にグリップを扱うことを指します。

逆に、グリップを中心にヘッドを動かすのがBの自中操です。どんなにコンパクトに振っても、グリップを固定してヘッドを積極的に動かそうとしているならば、それは自中操になります。上から最短距離でバットを出したが、手首の返しが早くて引っかけてしまう打者に多いパターンですね。

このように、グリップを移動させるか固定するか、ヘッドを動かすか動かさないかで大きく異なります。

バット中心操のメリットとデメリット
バットヘッドの運動量を小さくするため加速に時間がかからない
動き出しの早さがすごい
重い道具を軽く扱うために適した運動である
始動は早いが、バットヘッドを動かさないだけに威力が無い
自中操のメリットとデメリット
バットヘッドの運動量を大きくするため加速しきればパワーがすごい
筋力的に優れているならば簡単に飛距離を生み出せる
動き出しが遅いため手元で変化するボールに弱い
重い道具を重く感じるように扱ってしまうため体が小さい選手には不利

ヘッドが下がってしまいドアスイングになる

Q.『スイングしたときにヘッドが下がるとチームの監督に注意されます。バットが遠回りしているからコンパクトに振りたいのですがバット中心操に変えた方がいいでしょうか?』


監督に注意されるとのことですがこれはスイングのどのシーンでヘッドが下がっているのかというのがとても気になります。

  • インパクトのシーンでヘッドが下がり気味になる
  • スイングを始動したシーンでヘッドが下がっている

のどちらなのかです。

バットというのはとても重量のある道具です。たとえば片手でバットを持ち腕を前方へまっすぐ水平に伸ばしてみてください。水平、またはヘッドを若干上方へ立てようとしたら重力に拮抗しなければいけませんから、必然的に前腕の力や肩関節の固定支点が強く働きます。

こういうメカニズムを考えてみれば『インパクトでヘッドを下げるな立てろ(意識や感覚としてではなく実際のモーションとしてこう指導している場合)』と教えているのなら問題ありですね。

リラックスしていればバットヘッドは自然と下がる

なぜかというと…バッティングやバットスイングにはリラックスが有効であるから。

またリラックスとは限りなく力を抜くという意味ではなく“ある運動を行う際に必要最低限の力を計算できている状態”だということ。(この部分はリラックスと集中力の関係を改めて考えてみるで記事にしています)

つまり手からずり落ちてバットを地面に落とさないようにするための最低限の力、これに腕の水平ポジションを合わせた動きがバットという道具を理解する上で必要になってきます。

少年野球では「縦振りスイング」というのもインパクトでヘッドが下がることから賛否両論だと思いますが、実際のモーションとしてバットヘッドを立てるというのはそれだけ不必要な力を生み出さなければいけないということを頭に入れておいてください。逆に言えば、ヒットを打つのに必要最低限の力を計算できる体を持っている選手(リラックスが上手な選手)はインパクトで勝手にヘッドが下がるはずです。

ドアスイングへ繋がるヘッドの下がり具合は修正が必要

考えられるもう一つの下がり方である「スイングの始動シーンでヘッドが下がる」というケースはバット中心操に変えた方が良いかもしれませんね。

バット中心操の動作の流れ

理想的にはグリップ先行でヘッドが遅れて出てくるスイングを行いたいわけです。しかし、バットスイングというのはヘッド側を積極的に動かしてしまうと体の軸からバットが離れやすいという性質があります。ここは気を付けてください。もちろんそのような振り方で体の軸から離れるようにヘッドが遠回りしたとしても、筋力的に優れていている打者なら問題ありません。

もちろん明らかなドアスイングでは色々と対処しきれないボールが出てきますが、ポイントを前にして打てる程度の振り回し方ならば打率は低くなりますが長打力は身に付くはずです。

ご質問者様は少年野球で5年生のお子さんを指導しているそうです。メールのやりとりをしていた雰囲気からもお子さんは体が大きくない選手みたいだったので自中操で振り回すというスタイルはお勧めしませんでした。

回答のまとめ

この質問の回答をまとめますと、インパクトでヘッドが下がっているケースならあまり深く考えすぎない事が大切。スイングの振り出しのシーンでヘッドが遠回りするように下がるケースであれば、バット中心操に変えることをお勧めします。身体資源に恵まれているバッターならそのまま振り回すようなスイングでも有効なときもあります。

とはいっても、どちらのタイプであれスイングの始動シーンで手や腕でバットを操作しようとする意識や感覚を徹底的に排除していくことは必要ですから、こういう部分を地道にトレーニングしておきたいところです。

上手くバットが揺すれない選手への指導はどうすべき?

Q.『中学の顧問をやっております。バット中心操を生徒へ教えたところ、やはりというべきか上手な生徒と下手な生徒がハッキリとわかれました。上手く揺すれない選手にはどのような教え方が良いのでしょうか?ポイントを教えてください。』


講演などでバット中心操を教えても同じようなことが起こります。

バットを揺することで重心を感知して、さらにその重心をガイドラインにして上手く揺すれるようになる。こういうサイクルが起こせる選手は上手く出来るのですが、その最初の“重心を感知する揺すり方”が上手く出来ない選手はぎこちない動きになってしまいますね。

原因はズバリ意識の濃薄!

たとえば

  • 利き手と逆手を比べた場合
  • あなたの利き手と私の利き手を比べた場合
  • 私の利き手とダルビッシュ投手の利き手を比べた場合

こう考えるとどうでしょうか?

手の意識を濃くすることは限りない世界

利き手で行う手作業を逆手で行ってみてください。もどかしさというか利き手で感じているガイドラインが逆手では感じられなく上手く操作できないはずです。

このもどかしさというのがあなたの利き手と私の利き手の間でも起こっているわけです。私はこの仕事をはじめてからこういう意識系のトレーニングを指導していますからけっこう自信がありますw (もちろん私より意識が濃い人も多いと思いますが説明のためにそうさせてもらいます。すみません)

しかし、そういうマニアックなトレーニングを日々考えている私の利き手ですら、球界No.1のダルビッシュ投手の利き手と比べれば同じようなもどかしさがあるわけです。

七色の変化球を操る手の繊細な意識や感覚は想像しにくいでしょう。つまり、意識の濃薄というのはものすごく個人差がありそれらの優劣がパフォーマンスへかなり影響してくるということ。それは即ちセンスへ直結する。

手の意識を変えれば投球能力も変わってくる?

これは余談ですが、ピッチング上達の核って意外とここにあるんじゃないかと思ってたりもするんですよ。もちろん細かい事を言い出したらキリがないのですが…。

たとえば、小学校から野球をはじめて毎日毎日飽きもせず練習をする。すると高学年になるころには『こう投げれば大体あのボールが投げられる』というのがわかってくるわけです。で、ふつうの選手はここで終わり。

確かにこの時点でも逆手と比べれば利き手の精度はとんでもないほど高いんですが、センスのある投手はそこで終わりにしないんです。ダルビッシュ投手の半端ない変化球へのこだわりが良い例ですが、同じ利き手でもこの意識というのを突き詰めていけばいくらでも精度は高められるということです。

しかし、そういう意識系のトレーニングは肝心の練習方法とか指導方法がいまだに確立されてません。今後は筋力的なトレーニングよりもこういう目では確認できない部分のトレーニングが出てくるんじゃないかと私は思ってたりもします。

話が逸れましたが、上手く揺すれない選手は「揺すりたい部分の意識が薄い」ということです。なのでそこをアシストしてあげるような指導をしてあげれば上手くできるようになるんですよ。

上手くできない選手へ指導するポイント

回答のまとめ

ポイントは3つ。

以前ウォーミングアップの正しいやり方についてお話ししましたが、まずは質感を変えていくというのがポイントになってきます。

たとえば、同じように柔らかくバットを揺すろうとしていても『どういった柔らかさをイメージして行っているのか?』という感じです。

指導者の方はそういうイメージや意識をしっかり持って、選手とその質を共有できるように上手くリードすることが大切になってきます。

次に触ってあげること。肩甲骨なんかは自分で見ることができないため意識がしにくい部分でもあります。指導者の方が実際に触ってあげるだけでも意識というのは格段に高まりますから、これもポイントですね。

そして最後は一つ一つ丁寧に点検させる癖を覚えさせること。

意識が薄い選手はアバウトなことをやってはダメです。どこがどれくらい揺すりを邪魔しているのか?というのを明確にして徹底的にブレーキ要素を排除することを指導してください。

バット中心操でいえば…手、手首、肘、肩関節、肩甲骨、肋骨くらいは最低でも意識させてください。1つ1つのパーツを言葉でリードしてあげると小学生でも順番に意識できるようになります。少年野球での指導ならこのリード法が私的にはお勧めです。ぜひこの3つのポイントを行ってみてください。

色々なポジションでこの3つを丁寧に教えていけば重心感知能力は自然と高まりますからね!!こういう地味なトレーニングは毎日続けておきたいところです。

詳細はこちら

サブコンテンツ

CLOSE
CLOSE